自動化に対するCIOの第一のルール:ビジネスケースを明確にする

CIOは、ITと効果的なビジネス戦略の間における自社の立場に基づいて、組織の近代化と自動化のために必要なプロセスを特定することができます。Gartnerの副社長兼アナリストであるLaurie Shotton氏は、「業務効率化を推進する基幹システムをアップデートする場合、自動化するための安定したビジネスケースが存在することを確認する必要もあります」と述べています。CIOは通常、ITの自動化だけでなくビジネスの自動化推進の役割も担っているため、これは意外なことではありません。しかし、この2つは必ずしも相反する関係にあるとは限らないのです。

「この15年から20年において、企業は業務の効率化を図るために基幹システムのモダナイゼーションに取り組んできました」と同氏は説明します。「しかしそれと置き換えるためのビジネスケースが十分でないことが往々にしてあるのです」

自動化、ビジネス、およびCIO

自動化はKPIの改善やエンドユーザーエクスペリエンスの向上に役立つ新しいチャネルの構築を促進するため、事業を推進するCIOの主要なツールの一つであると、Rocket MortgageのCIOであるBrian Woodring氏は述べています。「最大の課題は、ビジネスの自動化によって、従来の非常に煩雑な手作業のプロセスを無くしてRPA化しているだけではないことを確認することです」と同氏は説明します。「これを怠った場合、短期的な勝利は得られるかもしれませんが、長期にわたる価値を提供することはできないでしょう。これまでに私が学んできたなかで最たるものの一つは、ビジネスに対して自動化を行うことはできないということです。自動化はビジネスに合わせて行わなければなりません。」

例えば、Cardinal Healthの医薬品部門の技術組織は、ビジネスリーダーと緊密に連携することで現在の弱点を特定し、これらのツールが顧客や従業員の体験をどのように改善するかに焦点を当てて、自動化すべき適切なプロセスを決定しているとCIOのGreg Boggs氏は述べています。

「当社のテクノロジー部門は、ビジネスリーダーと緊密に連携することで現在の弱点を特定し、これらのツールが、顧客や従業員の体験をどのように改善するかに焦点を当てて、自動化すべき適切なプロセスを決定します」と同氏は説明します。「一般的に、自動化構想がビジネスに与える影響を定量化するのは簡単でした。なぜなら、自動化構想には明確な事前・事後のビジネス指標があるからです。当社は、自動化における業務を成熟させ、ダイナミックでグローバルなヘルスケア環境において、軽快で革新的、かつ迅速に方向転換できるアーキテクチャを構築してきました」

しかし、金融機関におけるCIOの仕事の課題は、クライアントを満足させると同時にコンプライアンスを維持しながら、ビジネスのプロセス全体を再定義して無駄を省くことであるとWoodring氏は述べています。

さらに、自動化とAIを組み合わせた企業は、より迅速な意思決定、ビジネスプロセスの最適化、高い効率化を推進できるようになると、Capgemini社アプリケーション管理サービスデリバリー担当VPのSubramani Elumalai氏は語ります。

他のCIOも、ビジネスが自動化の取り組みの中心的な検討事項であることに同意しています。

たとえば、Northwestern Mutualでは、「アメリカ人を経済的不安から解放する」というミッションが、事業の優先順位を通知するすべての行動を後押ししていると、CIO兼EVPのJeff Sippel氏は述べています。

実用的なレベルでは、有意義な影響をもたらすエリアに自動化ソリューションを適用することを同社は常に考えています。こうした取り組みの成果を、自動化自体の成功ではなく、ビジネス上の成果として測定していると同氏は付け加えます。

イネーブラーとしての自動化

Adani Electricity Mumbai Ltdの商業管理責任者であるVaibhav Tandon氏にとっても、自動化とビジネス目標は密接な関係にあります。

自動化は、特定のプロセスを識別してビジネス要件を達成するためのイネーブラーとして機能すると同氏は述べています。また顧客中心主義は、電力会社の事業目標にとって極めて重要であり、自動化の取り組みにより、システムの生産性を高める効果が期待できます。「自動化は、顧客体験における重要な手段の一つとなり、その変化のライフサイクルを通じてさまざまな役割を果たすようになりました」とSippel氏は述べます。

そのためには、CIOがより広範で長期的な視点を持つと同時に、事業を継続し、最高の顧客体験を生み出すためのイノベーションを実現することが必要です。

「当社は基本的に街に暮らし続けながら街を再構築しており、CIOは、適切なツールは何か、そしてそのツールをどのようにして適切なタイミングで適切な場所に取り入れるかについて、常に戦略と戦術の両面から比較検討しています」と同氏は説明します。

Jamie Smith氏は、フェニックス大学のCIOとしての同氏の仕事は大学のあらゆる活動において自動化を適用する機会を伝達し、広めることだと述べています。Smith氏の視点は、自動化が人間の仕事を補強し、それによって大学が学生のためにより多くのことを実行できるようになることです。

現在同大学では、人間が行う繰り返し作業を自動化して効率化を図るRPA、学生の学習意欲の向上や出席を促すMLベースの自動ナッジ、社会人学生が支援を必要とする際のサポート窓口を広げる自動バーチャルアシスタント(Phoebe)など、さまざまな自動化を採用しています。

CIOの優先事項

複雑なワークフローの自動化は今後もCIOの優先事項であると、ロンドンに拠点を置くRossumのCTO兼チーフAIアーキテクトのPetr Baudis氏は述べています。重要なことは、このようなプロジェクトを部門間の垣根を越えてスケーリングすることです。これを実現するきっかけとなるのが、AIを活用したデータ取得の継続的な改善です。

高速かつ正確なデータ抽出は、取引や自動化機能を促進し、あらゆるビジネスインテリジェンスやデータ分析プラットフォーム内の基礎技術となり、優れたコラボレーションやB2Bコミュニケーションを可能にすると同氏は語ります。

「当社が重要と考える自動化技術には、RPAならびにプロセスマイニングやタスクマイニングなどがあります」とBaudis氏は述べます。「企業が自動化プロジェクトを試し、拡大するなかで、これらすべての技術間で収束していくのがわかります。

Adani Electricityは今年さらに、配電管理、カスタマーエクスペリエンス、メータリングエコシステム、消費者データ分析の分野で進化を続けているとTandon氏は述べています。

「当社はSASのAI/MLベースのエネルギー予測ソリューションを実装し、予測性能を向上させました」「これにより、約97%の予測精度を実現し、電力調達コストの最適化を図るとともに、250万人の消費者に安定した電力を供給することが可能になりました。流通管理、メータリングエコシステム、消費者データ分析においても進化を続けていきます」と同氏は説明します。

この電力会社の主要な自動化プロジェクトには、高度な配電管理システムを実装し、可視性とスケーラビリティを強化した自己修復型グリッドインフラストラクチャを構築し、カスタマーエクスペリエンスを向上させることが含まれています。また、同社はクラウドベースのデータレイクとアナリティクスソリューションの実装により、Tandon氏が言うところの「信頼できる唯一の情報源」を提供し、セルフサービス分析やデータに裏付けられた意思決定を促進し、より効率的な運用を実現しています。

3年前には2.2%あった当社のお客様の推定検針は、今では0.3%まで下がりました」と同氏は説明しています。「メカニズム全体が自動化されたため、人の手をかけずにすべての測定値を光学的にダウンロードできるようになりました。この取り組みにより、当社のシステム精度や株式資本利益率(RoE)によるインセンティブが確保されただけでなく、透明性が向上し、消費者からの苦情が減少しました」

Cardinal Healthの医薬品部門の主要目標は、顧客により良いサービスを提供するために、倉庫の自動化への取り組みを強化することだとBoggs氏は述べます。

「ITでは、Infrastructure as Code(IaC)、継続的なインテグレーションとデプロイ、およびAIオペレーションを優先していきます」と同氏は説明します。

フェニックス大学でも、いくつかの新しい自動化プロジェクトを進める準備ができています。現在同校では、学生や職員のさまざまな行程において、MLと自動化の利用拡大を可能にするエンタープライズ プラットフォームの開発を進めているとSmith氏は述べます。

「このエンジンは、データレイクに緊密に統合され、最適なチャネルを通じて、適切なタイミングで、真に個別化された学生サポートを可能にします」と同氏は付け加えます。

また同校は、入学手続き、成績処理、学資援助など、ますます複雑化する業務の自動化を継続することで、学生支援の充実を図る予定です。

「近年の進歩によって非構造化ドキュメントの利用や自然言語処理が可能になったことで、まったく新しい複雑なタスクが自動化の対象となりつつあります」とSmithは語ります。

同氏のチームは、自動化を効果的にスケールアップし、安全かつ確実に管理するためのプラットフォームとシステムを構築しています。結局のところ、存在しないはずのプロセスを自動化することほど非効率なことはないと同氏は述べています。AIと組み合わせた自動化は、企業がより迅速な意思決定を行い、ビジネス プロセスを最適化し、より高い効率化を推進する上で大きく役立つはずだとElumalai氏は述べます。「このような自動化は、自動検出、自動修復ソリューションによるビジネスKPIの向上、およびエンドユーザー エクスペリエンスを向上させる新たなチャネルの創出などの可能性を秘めています」

Data Center Automation, IT Leadership



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