米国ホンダIT部門、生成AIでイノベーションを促進

自動車業界では電気推進エンジンのテクノロジー採用が急速に進み、ボルボ・カーズは明確な野心を持ち明確な先駆者となるために全力を尽くしています。

アメリカン・ホンダ・モーターのデジタル改革は、電気自動車への完全な転換ほど劇的なものではないかもしれませんが、同社の3万人を超える従業員に、自動車メーカーの創意工夫を促進するのに必要なエンジン(原動力)を提供します。

1996年に初のハイブリッド自動車をデビューさせた日本の自動車メーカーの子会社で、カリフォルニア州トーランスに拠点を置く同社は、この春、GMと共同開発した初のフル電動ゼロ・エミッション車、ホンダ「プロローグ」とアキュラのSUV「ZDX」、および、ミシガン州ブラウンズタウンの合弁製造センターでGMと共同開発した燃料電池車(FCEV)技術を搭載したもう一つの新型車、「CR-V」の生産を開始します。

どの技術が業界の標準になるのかが不透明な中、このような革新的なEVと水素燃料電池のエンジニアリングが完成したことは、アメリカン・ホンダのIT担当副社長ボブ・ブリゼンディーン氏が36年間の在職中に常に直面してきた「決してスピードを緩めることはない常に変化し、曲がりくねった道」を反映しています。

「当社が抱える最大の課題は、変化のスピードについていくことです。私たちは常に刷新し、IT組織として会社の行く末を少なくとも一歩先取りできるようにしなければなりません」とブリゼンディーン氏は述べています。

当然ながら、北米にある12の製造工場における高度な自動化とロボット技術は、デジタル技術の大きな進歩に依存しています。

北米法人では、社内のワークロードの20%未満しかパブリッククラウドへの移行が完了していませんが、アメリカン・ホンダがSaaSプラットフォームであるServiceNowとSalesforceを積極的に採用し、綿密に計画されたAI戦略を推進していることは、ブリゼンディーン氏と彼のIT部門がスピード感を持ってイノベーションを推進するためのアジリティと柔軟性を備えていることを物語っています。

台頭する生成AI

AI戦略に関しては、アメリカン・ホンダの機械学習に関する豊富な経験が、次の波である生成AIを活用する上で有利に働いています。

昨年の生成AIの台頭により、あらゆる業界のCIOにはその可能性を引き出すようプレッシャーがかけられるました。ホンダのような自動車メーカーにとって、生成AIは自動車の設計者や開発者がより高いレベルでイノベーションを起こせるようにする機会を提供する、とIDCのワールドワイド・デジタルビジネス戦略担当リサーチディレクター、クレイグ・パワーズ氏は言います。

「自動車産業は、デジタル・ビジネスへの転換という点では、これまで先進的な産業ではありませんでしたが、サプライチェーンや製造プロセスの合理化の点で、自動化やAIの活用が大きな関心を集めています。製品開発を強化するためにAIを活用して次のステップに進むことは、自動車メーカーにとって大きな後押しとなります。最初にその一歩を踏み出した企業が、より迅速で広範なイノベーションから利益を得ることができるでしょう」とパワーズ氏は説明します。

これを踏まえ、ブリゼンディーン氏は、アメリカン・ホンダをライバル社より一歩リードさせるために、5つの柱からなる生成AI戦略を開発しました。これは、従業員の生産性と効率を高めるための社内利用に重点を置いたものです。

この戦略は、アメリカン・ホンダのITプロフェッショナルと知的労働者が生成AIをどのように使用するかを企業が完全に制御し、どのような変動要因にも耐えうるセキュリティ戦略を可能にすることに尽きます。また、開発、法務、顧客エンゲージメントなど、特定の領域における生成AIの優れた応用例も含まれています。

アメリカン・ホンダの担当者によると、より複雑なニーズについては、ユースケースのおよそ20%で、ホンダ固有のコンテンツの取り込みや、セキュリティの追加、効果的なデータセグメンテーションを必要とする特定の用途のために、社内で専用環境を立ち上げるといいます。  例としては、社内規定、コールセンター、製品開発などが挙げられます。 

ホンダはマイクロソフトのChatGPT Enterprise(別名:Copilot)を、例えばOutlookやPowerPointを使用するOffice 365の従業員向けに展開する計画を持っており、主に社内で行われるアプリケーションの開発やメンテナンス、ITサービスプロセスを効率化するために、GitHubのAIモデルを積極的に試験運用しています。

ブリゼンディーン氏は、生成AIアプリケーションが従業員に取って代わるという話はないと語ります。

「当社はヒューマン・イン・ザ・ループというコンセプトを取り入れています。人間の創造性と生産性を高めるために、AIへの取り組みを設計しているのです」と同氏は述べ、同社のパイロットテストではドキュメントとデータの要約における生産性の大幅な向上と、データインサイトの迅速な作成が確認されたと指摘しています。

最後に、アメリカン・ホンダは、販売業者ネットワーク、パートナーネットワーク、そしてSaaSの外部サービス・プロバイダと生成AIアプリケーションに関して的確に連携する方法を定義しています。例えば、ホンダのAI開発チームは、ホンダにとって最も生産性の高いアプリケーションを開発するために、同じく生成AIを実装しているServiceNowと緊密に連携しています。

同社はまた、他のサービス・プロバイダやサプライヤーと連携して、アメリカン・ホンダのビジネスに最も効率的なアプリケーションの設計と開発も行っています。

未来に向けたトレーニング

ブリゼンディーン氏は、同社の全体的なAI戦略は、データと分析のシステムと緊密に統合されていると指摘します。これらのシステムは、特定の目的のワークロードのためのオンプレミスのメインフレーム、SaaSアプリケーション、AWSとMicrosoft Azureの両方の使用を含む複雑なインフラストラクチャ上に存在し、実行されています。

AI戦略を成功させる鍵は、一部は、構造化データと非構造化データの品質とクリーンさである、と同氏は述べています。

従業員のトレーニングは、アメリカン・ホンダの生成AIプログラムが成功するかどうかのもう一つの大きな決定要因だ、とも続けています。

そのため、アメリカン・ホンダは、経営トップから開発者、知的労働者に至るまで、全従業員のデジタル能力を高めるために、複数年にわたる研修・開発プログラムを開始したと同氏は説明します。

「経営幹部はAIの機能を理解し、それが業務面や将来的には戦略面にどのように応用できるかを理解する必要があります。そして、各事業部門のデジタル担当者が必要なものをすべて習得できるよう、トレーニングを実施しました」と述べています。

ブリゼンディーン氏によれば、ITサービス・マネジメントや、経常収益を目的とした保険事業への参入など、多くのデジタル・ビジネスへの取り組みが進行中です。

しかし、間違いなく、事業の変革はすべて企業のテクノロジー変革によるものです。「この変革のすべてを結びつけるデジタルの糸があります。テクノロジーにおけるイノベーションが何よりも最初に実現するのが、当社のビジネスにおけるイノベーションなのです」と同氏は語っています。



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