トマゴ・アルミニウムがクラウドジャーニーの方針を転換した理由

トマゴ・アルミニウムはアジア太平洋地域の業界大手であり、デニス・モンクリーフ氏はIT管理者として、アルミニウムの生産プロセスをより効率的にするために適切なテクノロジーを活用する責任を負っています。

組織のDX(デジタルトランスフォーメーション)の過程について語るとき、同氏はそれを不変のものだと表現します。「確かに、DXは、長い間あちこちで飛び交っている専門的流行語です。しかし、プロセスをデジタル化することは依然として重要です。現代のビジネスでは、古い、パッチが適用されていない、サポートされていないバージョンのものを稼働させる余裕はないからです。リスクが高すぎます」と同氏は言います。

しかし、モンクリーフ氏の経験では、新旧のバランスを見つけるのは容易ではありません。

この難問が、2015年にトマゴがERPシステムをクラウドに移行する動機となりました。同社のSAP ERPシステムのバージョンはサポートが終了しており、選択したSAPインスタンスはオンプレミスで利用できるサポートされたハードウェアプラットフォームではありませんでした。既存のシステムを「燃え上がるプラットフォーム」と表現する同氏は、クラウドへの移行は基本的に唯一の選択肢だったと振り返ります。

当時、クラウド移行はかなり新しく、そのプロセスにはまだ未知の部分が多くありました。「パートナーが管理するクラウド環境に足を踏み入れました。クラウド導入ジャーニーを始めたばかりで、これが何を意味するのか理解していませんでした。データがパートナーの管理する環境に置かれた瞬間から、私たちはそのデータのコントロールを失うことになるのです。もちろん、このモデルには長所も短所もありますが、それが何なのかを私たちは十分に理解していなかったのです」と同氏は説明します。これは、早期導入ユーザーの落とし穴の一つだと同氏は指摘します。間違いを犯しながらも、望ましくはそこから学んでいくのです。

とはいえ、当初の経験はポジティブなものでした。モンクリーフ氏によれば、最初の2~3年は、ビジネスのスピードと回復力が向上したといいます。しかし、接続性の問題が発生した時、エンドユーザーとクラウドソリューションの間に非常に多くのブレークポイントがあったため、どこに問題があるのかを特定するのは困難でした。「誰もが問題があることを認めづらくなりました。数か月に一度、何かがうまくいかなくなり、適切なリソースから適切なサポートを受ける前に、その原因がどこにあるのかを正確に診断しなければなりませんでした」と同氏は振り返ります。

コントロールを取り戻す

24時間365日で稼働する製錬所を経営し、約3万品目の在庫に関連するデータを保存するERPシステムを使用している場合、必要なときに必要な情報にアクセスできなければ、その影響は深刻なものとなります。

そこで、移行から5年後、トマゴは環境を見直し始めました。クラウド市場が大きく成熟したことで、同社は自社が持っているものを見て、他のソリューションと比較することができるようになっていました。

当時、3つの選択肢を検討しました。オンプレミス、マネージド環境の継続、そしてサービスモデルとしてのERPへの移行です。モンクリーフ氏にとっては、所有権、透明性、そしてコストに関わる話でした。この再評価の過程で、既存のシステム全体における分析情報、管理、可視化の欠如が認識されました。

「当社のもののようなERPソリューションは巨大です」と同氏は言い、使用しているものとしていないものをすべて把握するのが難しくなると説明します。例えば、2万ドルの電気代を請求されているのであれば、メーターをチェックし、使用量と請求額が一致していることを確認したほうがいいと同氏は言います。「電気メーターが隠されたままで、月末に紙切れだけが送られてきて、何も問題はなく、2万ドルの支払い義務があると言われたら、おそらく疑問に思うでしょう」と同氏は言います。トマゴは、すべてが安全であり、正常に稼動していると言われたましたが、言われたことが正確かどうかを確かめる術がありませんでした。

「要するに、大きなブラックボックスの塊のようなものでした。大金を投入してサービスを受けていましたが、コンプライアンスやセキュリティ、デューデリジェンスといったものを本当にコントロールできているのか、自信を持って取締役会に言うことができなかったのです」と同氏は振り返ります。

そして2020年、トマゴはERPシステムをオンプレミスに戻し、この決断が功を奏しました。「当社はサイバーの観点から自分たちの立場を理解できるようになりました。なぜなら、成長率を正確に把握していますし、システムが最新であることも、毎月同じコストであることもわかっているからです。クラウドでは、追加作業をしたり、開発チームに追加のスペースを与えようとすると、追加負荷に見合った料金を支払わなければなりませんでした。4年前に戻ってきたときよりも、今のほうがシステムは多いし、環境もずっと大きくなっていますが、かかっている費用は同じです。ここ数年に経験してきた成長を考えると、クラウドを利用することで、事業全体の効率化を推進するために行ってきた革新的なことが、かえって制限されてしまったかもしれません」と同氏は言います。

これは、IT予算が製品生産に使用される機械や車両の予算と常に競合する産業施設では特に当てはまります。

しかし、この経験はモンクリーフ氏が将来クラウドを検討しないことを意味するわけではありません。「私にとって大切なのは、適切な場所に適切なワークロードを配置することです。アルミニウム製錬所として日々稼働している当社のような施設では、機械の近くに置いておかなければならない一定量のデータがあります。しかし、過去のデータの一部に関しては、常にその情報にアクセスできることは、おそらくそれほど重要ではありません」と同氏は言います。

準備態勢も大きな要因の一つです。モンクリーフ氏は、クラウドでできることのなかには、皆がワクワクするような素晴らしいものもあったと認めます。しかしその前に、クラウドを活用する準備が整っていることを確認し、解決しようとしている問題を解決するためにクラウドをどのように利用する予定なのかを正確に把握できるよう、基盤を固めておく必要があると同氏は指摘します。



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